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眠れること
 
  最近は安心というか、安堵して眠れる日が続いているのは、ありがたいことである。イラクや北朝鮮では、生きることがボーダーラインにある国々では、さぞ生きた心地がしないでしょう。この日本で住んでいることに、至上の恵みを感じている。

  人間には生命を維持する上で必要なことが、4つあるのではないかと思う。 食事すること、仕事をすること、余暇を過すこと、そして睡眠を摂ること。最近は、いざなぎ景気よりも長い好景気が続いていると、報道されているが、数年前には眠れない日がしばらく続いたことがあった。日本経済界、特に金融界がグラッと激震を体感した時でもあった。
  物音か何かと目が覚め、眠りが浅く、朝方に一旦目が覚めると、もう寝ることができない日々であった。別に心配をしたところで、どうなるというものでもないが、売上は頑張っているが伸びないし、手形は回ってくるし、借入金は返済せねばならないし・・・、銀行との折衝には、以前には自信があったように思うが、迷いが生じてきていて、いったいどうすればいいか判らないときがあった。
  おそらく、銀行も今までのやり方ではないやり方で、迷っていたし、上の方針がコロコロ変わるので、戸惑いがあったのではないでしょうか。

  さて、この平成景気は緩やかではあるが、内需拡大基調で徐々に上向きには動いているように思う。大企業はここ1、2年空前の数字を残し、政府やマスコミは景気回復と大きく大衆を煽っている感じは否めないが、これから中小企業に浸透して一般の私たちまで下りてくるにはまだまだ先ではないだろうか。
  銀行が不良債権処理を片づけたように、中小零細企業も累積赤字や目に見えない不良債務を片づければ、政府の税収も増え、国家予算も潤うことになる。ここまでくれば景気回復が「ほんまもん」になるわけだが、そこまで行こうとすれば、金利上昇、材料高騰などの障壁が邪魔をすることになってきている。
  中国のように、国土全体が高度成長期の大きな潮流に差しかかっているのではなく、日本流の高いレベルでの成長となれば、勾配も緩やかなのは当たり前のことである。健康管理の面から言えば、穏やかな動きであるほうが望ましい。
  急発進、急ブレーキは本当に健康に悪い。何かの取材で「寝ることが趣味である」と言ったことがあるが、安心して眠れることほど、人間にとってもあらゆる動物にとって幸せな ことはない。びくびくしながら寝る、というのは幸せの原点を侵すことのように思う。

  眠れない日が、幾日も続くと、ゆっくり眠れたときに、非常なる幸せを感ずるものだ。僅か5分であっても、ベッドの上でなくても、身体が休まる思いがする。(2006.10.13)