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近頃のパソコンブームに思う

  一昨年の十一月にウィンドウズ95の日本語版が発売された。英語版は八月に発売されていて、日本のパソコン市場では、インターネットやウィンドウズの宣伝効果もよろしく、一躍パソコンブームになって一年になる。どの書店でもコンピュータコーナーが拡張され、ウィンドウズの解説書がワンサと並ぶ。どの本を選べばいいか判断をするのにも、苦労をする。熟年の夫婦が目を細め解説書を選んでいる姿は、微笑ましくもあるし、痛々しく思ってしまう。
 実際にこのブームでコンピュータを買った方はたくさんいらっしゃると思う。形状ではデスクトップ型やノート型、一体型のコンピュータと大まかに三種類あるが、主装置やメモリなどの性能は初心者には全く理解できない。中にはテレビやコンポのような電化製品と同じように捉えて購入したが、ゲームとワープロをやるだけで、これと言って使っていないのが、現状ではないだろうか。未だに腫れ物に触る機械のように「壊れたら・・」という不安感から、シートを被せて床の間に置いている方もいらっしゃるでしょう。壊れたら困るから使わないのは、三振したら嫌だからベンチにいる野球選手と同じで、なぜコンピュータを買ったの?と訊ねたくなる。とにかく時代についていく。「インターネット」という世間の風潮に流されて買った方もたくさんいらっしゃると思う。
 要するに、乱暴な見解を示すならば、パソコンを買った目的が一種の焦りからで、買ったあと、どうするかがはっきりしていなかったのではないでしょうか。
 あれもできる、これもできるという宣伝文句に左右されないことが、大切で、自分はパソコンでこれがしたいという夢を持つことです。一旦パソコンを買ったら何かひとつ、パソコンを触る日課をもつことが賢明でしょう。別に費用のかかるインターネットや電子メールをしなくても、日記でも、ワープロでも、FAXでも・・・、自分のできるところから始めれば、それでいいのではないでしょうか。
 これからも新しい製品やソフトが開発され、市場に出回ってくるでしょう。ウィンドウズ97が発売されるという噂も聞かれています。98年にはNECが何かイベントをするかもしれませんが、パソコンを購入する方は、いい加減な時期にどの製品を買うかを決断して、改良ソフトが発売されても、それに関心は示しても、ついて行かないことが大切です。
 そして、購入はしたが、やっぱり自分に合わないと思えば、もう一度大きな決断をしてできるだけ早い時期に知人や中古業者に売ってしまうことです。
 ところで、このパソコンブームは、一種の「仕掛け」によるものの社会現象にも思うことがある。
 なぜか。ハードもソフトも新製品のサイクルがあまりにも速すぎるように思うからだ。弱小のソフトメーカーは、上陸したウィンドウズの速度に追い付かず潰れていく業者が絶えない。98対応、DOS/V対応、WIN3.1、ウィンドウズ95対応、マッキントシュ対応など、すべての機種に合うように、開発研究をせねばならない。開発費は相当な額になる。表向きは華やかに見えるパソコン業界ではあるが、どっぷり漬かってしまうと、価格競争、開発費の増などドロドロの世界だ。
 マイクロソフト社がウィンドウズのバージョンを上げるたびに、日本のメーカーやソフト業者がそれに合わせた開発を強いられる。さらにMS社のロゴマーク取得のために厳しすぎるハードルをクリヤーして、巨額な著作料などを払うことになる。
 このような最中、あるワープロソフトを開発販売しているソフトメーカーの販売力、宣伝力、開発力はすごいものだ。実にわずか二年でバージョンが三回も更新されているのだ。コンピュータを携わっている者にとっては、実に半年で新しいバージョンが発売されることは、たいへん迷惑なことだ。やっと理解でき活用可能になった時期に、改良されたソフトが店頭に並んでしまう。新しいバージョンが発売されることは、現製品のバグ埋めのためである、と聞いたことがあるが、それにしても、二年間で四世代の製品が存在すること自体、ユーザーを馬鹿にしているのではないかと思う。(1997.1)